安全なロボットシステムを設計していただくために
ロボットを安全に使用していただくことはもちろんですが、お客様が設計するロボットシステム全体に対しても安全性を十分考慮してください。
この項では、当社のロボットを用いてロボットシステムを設計する場合、最低限遵守していただく条件について説明します。
ロボットシステムは、本マニュアルに示す原則にしたがって設計、制作してください。
環境条件
ロボット、およびロボットシステムを設置する環境は、システムで使用するすべての機器のマニュアルに記載されている条件を遵守してください。
システムのレイアウト
ロボットシステムのレイアウト設計で、ロボットと周辺装置類との干渉に十分注意してください。特に非常停止時は、ロボットが通常の動作経路と異なった経路を経て停止します。余裕をみたレイアウト設計が必要です。また、保守や点検のためのスペースが十分確保できるレイアウトにしてください。
手動高速モード (T2)を使用する場合は、ロボットと周りの建造物, 構造物, 周囲の防護, その他の設備等との間に、500mmの隙間を確保してください。
ロボットの動作エリアを制限してロボットシステムを設計する場合は、マニピュレーターマニュアルに記載された方法に従って、動作エリアを制限してください。 制限は、ソフト軸制限での制限か、メカストッパーによる制限で行います。ソフト軸制限は、以下のマニュアルを参照してください。
"ロボットコントローラー 安全機能マニュアル"
メカストッパーの制限は、以下のマニュアルを参照してください。
"マニピュレーターマニュアル"
非常停止ボタンは、ロボットシステムの操作装置の近くで、作業者が緊急時すぐに押すことができる位置に、確実に設置してください。
コントローラーは、内部に水や他の液体が浸入するような場所に設置しないでください。コントローラーが汚れた場合に、水などで洗わないでください。
サービスおよびメンテナンス時にロックアウトの適用を安全に行うために、断路器は、可能な限り安全防護柵の外側に配置してください。
ロックアウト/タグアウトによる電源投入防止
メンテナンスや修理のために安全防護柵内に作業者がいる場合に、誤って第三者がロボットの電源を入れないように、ロックアウト/タグアウトの方法でコントローラーの電源を遮断してください。
ロックアウトについては、以下を参照してください。
各部の名称と機能
ハンドの設計
ロボットのハンドは、ロボットシステムの電源が遮断されても、ワーク(把持しているもの)を放り出すことのない配線、および配管にしてください。
ロボットハンドの質量、および慣性モーメントは許容値以下で設計してください。許容値を超えての使用は、ロボットに過大な負荷がかかります。これは製品寿命を短くするばかりでなく、ハンドやワークに加わる外力によっては予期せぬ危険な事態を招く可能性があり、危険です。
ハンドの大きさによっては、ロボット本体とロボットハンドが干渉する可能性があります。注意してください。
周辺装置の設計
ロボットシステムへの部品などの除材や給材装置は、作業者の安全が十分確保できるような設計にしてください。ロボットを停止せずに除給材する場合は、作業者が危険領域に入らなくてもいいように、シャトル装置を設置する、もしくはSLPを使うなどの工夫をしてください。
SLPについては、以下を参照してください。
安全機能
周辺装置の動力源の遮断(電源断)が、危険な状態にならないようにしてください。ハンドの設計で記載した、ワークの放り出し防止だけでなく、ロボット以外の周辺装置に対しても、安全に停止できるか、また、動力の遮断が危険な状態にならないかなどの安全を確認してください。
遠隔操作
周辺装置の起動や停止について、ロボットシステム全体として、遠隔操作による危険性を防止するための安全対策を行なってください。
本製品では、コントローラーI/Oにリモート機能を割りあてることにより、ロボットシステムを遠隔操作できます。以下を参照してください。
I/Oのリモート設定
リモート機能が有効の場合は、リモート以外からの動作コマンドの実行や、I/O出力を禁止します。
マニピュレーター動作中の電源オフ
マニピュレーター動作中に、コントローラーの電源をオフしないでください。
マニピュレーターの動作中にコントローラーの電源をオフし、マニピュレーターを停止させると、以下のトラブルが起こる可能性があります。
- 減速機の寿命低下、および破損
- 関節部の位置ずれ
マニピュレーターの動作中に、停電などでコントローラーの電源オフが発生した場合は、電源復旧時に、以下を確認してください。
- 減速機に破損がないか
- 関節部に位置ずれがないか
位置ずれが発生している場合は、原点調整をおこなってください。
非常停止
ロボットシステムには、作業者が、ただちにシステムを停止させることができる装置が必要です。コントローラーや、他の機器に備えられている非常停止入力を使用し、非常停止装置を設置してください。
以下を参照してください。
非常停止入力コネクター
安全I/Oコネクター
非常停止スイッチは、以下に注意してお使いください。
- 非常停止スイッチは、緊急時にマニピュレーターを停止する場合のみに限定して使用してください。
- 緊急時に非常停止スイッチを押す以外で、プログラム動作中のマニピュレーターを停止する場合は、標準I/Oに割り当てた、Pause (一時停止), STOP (プログラム停止)による命令、により行ってください。
Pause, STOP命令は、励磁が切れないため、ブレーキはロックしません。
非常時以外 (正常なとき)にロボットシステムを非常停止状態にさせたい場合は、マニピュレーターが動作していないときに非常停止スイッチを押してください。
マニピュレーターが正常に動作しているときに、むやみに非常停止スイッチを押すことは避けてください。
以下の寿命が短くなる可能性があります。
ブレーキ寿命
ブレーキがロックすることにより、ブレーキの摩擦板が摩耗し、ブレーキ寿命が短くなります。- 通常のブレーキ寿命の目安:
約2年 (100回/日ブレーキを動作させた場合)
または約20,000回
- 通常のブレーキ寿命の目安:
減速機の寿命
減速機に衝撃が加わることにより、減速機寿命が低下する可能性があります。
非常停止時の停止距離について
非常停止スイッチを押しても、動作中のマニピュレーターは瞬時に停止することはできません。また、停止時間および移動量は、以下のような要因により異なります。
- ハンド質量、WEIGHT設定、ACCEL設定、ワーク質量、SPEED設定、動作姿勢 など
マニピュレーターの停止時間、および移動量は、以下のマニュアルを参照してください。
"マニピュレーターマニュアル - Appendix B. 非常停止時の停止時間と停止距離"
セーフガード (SG)
マニピュレーターの周囲には、安全のための安全防護柵を設け、安全防護柵の出入口にはセーフガードを取りつける必要があります。
本マニュアルで述べる「セーフガード」とは、安全防護柵の中に入るためのインターロックが付いた安全装置のことを指します。具体的には、セーフティードアスイッチ、セーフティーバリア, ライトカーテン, セーフティーゲート, セーフティーフロアマットなどになります。セーフガードは、安全防護柵内に作業者がいる可能性があることを、ロボットコントローラーに知らせるための入力です。安全機能マネージャーで、必ず1つは、セーフガード(SG)を割り当てる必要があります。以下を参照してください。
安全I/Oコネクター
セーフガードを開くと保護停止が働き、セーフガード開状態(表示: SO)になります。
- セーフガード開
動作禁止状態となります。セーフガードを閉じてラッチ解除を実施し、 命令を実行するか、操作モードがTEACHもしくはTESTになり、イネーブル回路が作動するまで、ロボットは動作しません。 - セーフガード閉
ロボットは、非制限状態 (ハイパワー状態)で自動運転可能です。
警告
- 作業者が安全防護柵内で作業している間に、第三者が誤ってセーフガードを解除すると危険です。安全防護柵内で作業している作業者を保護するために、ラッチ解除スイッチにロックアウトあるいはタグアウトの手段を用意してください。
- ロボット近くの作業者を保護するため、必ずセーフガードを接続して、正しく作動することを確認してください。
安全防護柵の設置
マニピュレーターの最大領域内に、安全防護柵を設置する場合は、SLPなどの安全機能を組み合わせてください。ハンドおよびワークの大きさを十分考慮し、稼動部と安全防護柵が干渉しないようにしてください。
セーフガードの設置
以下の条件を満たすように、セーフガードを設計してください。
- キースイッチ型の安全装置を使う場合は、強制的にインターロックの接点が開くタイプを使用してください。インターロック自身のばね力で接点を開く(オープンになる)ものは、使用しないでください。
- インターロック機構のものは、インターロック機構を無効化しないでください。
- ライトカーテンを使用する場合、ラッチ状態を解除するまでは、セーフガード開状態を保持してください。
停止距離の考慮
セーフガードが開になっても、動作中のマニピュレーターは瞬時に停止することはできません。また、停止時間および移動量は、以下のような要因により異なります。
ハンド質量、WEIGHT設定、ACCEL設定、ワーク質量、SPEED設定、動作姿勢 など
マニピュレーターの停止時間、および移動量は、以下のマニュアルを参照してください。
"マニピュレーターマニュアル - Appendix C. 安全扉開時の停止時間と停止距離"
上記値とISO13855を参照して計算を行ってください。
距離を近づけたい場合は、SLSやSLPを使って必要な制限をかけてください。
セーフガードの動作上の注意
モーター励磁中に、むやみにセーフガードを開けないでください。頻繁にセーフガード入力が入ると、リレーの寿命に影響を与えます。
- 通常のリレー寿命の目安: 約20,000 回
存在検知装置
上記のセーフガードのインターロックは、安全防護柵内に作業者がいる可能性を示すものとして一種の存在検知装置とも考えられます。その他に存在検知装置を設置する場合は、十分なリスクアセスメントを行い、その信頼性については最大限の注意を払ってください。
次に留意点を示します。
- 存在検知装置が働いていないとき、または危険な状態が終了しないうちは、安全防護柵内に侵入できたり手が届いたりしないようにしてください。
- 存在検知装置は、システムがどのような状況にあっても、安全側に作用するようにしてください。
- 存在検知装置が働いてロボットの動作が停止した場合、検知された対象物を取りのぞかない限り、ロボットの動作が再開しないようにしてください。何らかの操作によって、自動的に動作が再開できるようにしないでください。
セーフガードのリセット
ロボットシステムは、安全防護柵の外側から、操作することによってのみ動作を再開できるようにしてください。セーフガードは、解除するだけでロボットが動作を再開することはありません。このような考え方をシステム全体のインターロック、または存在検知装置に適用してください。
ロボット操作パネル
ロボット操作パネルを設置する場合は、必ず安全防護柵の外部から操作できる位置に設置してください。
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