メカストッパーによる動作エリアの設定

メカストッパーにより、機械的にこれ以上は動けない、絶対的な動作エリアを設定します。
第1関節と第2関節は、設定エリアの角度に対応する位置にねじ穴があります。メカストッパー (可変)の位置により、動作エリアを設定します。設定したい角度に対応するねじ穴にボルトを取りつけます。
第3関節は、任意 (最大ストローク以内)に設定が可能です。

架台取付仕様

記号 説明
a 第3関節メカストッパー (下限メカストッパー)
b

第3関節メカストッパー (上限メカストッパー)

*位置を動かさないでください。

c 第2関節メカストッパー (可変)
d 第2関節メカストッパー (固定)
e 第1関節メカストッパー (固定)
f 第1関節メカストッパー (可変)

壁取付仕様
架台取付仕様と異なるストッパー位置のみ案内しています。

記号 説明
a 第1関節メカストッパー (固定)
b 第1関節メカストッパー (可変)

天井取付仕様
架台取付仕様と異なるストッパー位置のみ案内しています。

記号 説明
a 第1関節メカストッパー (固定)
b 第1関節メカストッパー (可変)

第1関節と第2関節のメカストッパーによる設定

第1関節と第2関節は、設定エリアの角度に対応する位置にねじ穴があります。メカストッパー (可変)の位置により、動作エリアを設定します。

以下の手順で設定したい角度に対応するねじ穴にボルトを取りつけます。

  1. コントローラーの電源をオフします。
  2. 設定角度に対応するねじ穴に、六角穴付ボルトを取りつけます。
関節 六角穴付ボルト 本数 推奨締付トルク 強度
1 M12×20 総ねじ 1 127.4 N·m (1300 kgf·cm) ISO898-1 property class 10.9または12.9相当
2 M10×10 総ねじ 2 73.5 N⋅m (750 kgf⋅cm)
  1. コントローラーの電源をオンします。

  2. 変更したメカストッパー位置に対応するパルスレンジを設定します。

    キーポイント


    パルスレンジは必ずメカストッパーの位置より内側に設定してください。

    例: GX10-B854Sで、第1関節を-105° ~ +105°、第2関節を-122.5° ~ +122.5°に設定する場合


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >JRANGE 1,-436907,5679787  '第1関節のパルスレンジを設定
    >JRANGE 2,-2230045,2230045 '第2関節のパルスレンジを設定
    >RANGE                     'Range命令で設定値を確認
    -436907,5679787,-2230045,2230045,-2270823,0,-1951517,1951517
    
    
  3. アームを手で動かし、メカストッパーに当たるまでに周辺装置にぶつかるなどの支障がないことを確認します。

  4. 設定変更した関節を、パルスレンジの最小値、および最大値の位置まで低速で動作させ、アームがメカストッパーにぶつからないことを確認します。
    (設定したストッパー位置と動作レンジを確認します。)

    例: GX10-B854Sで、第1関節を-105° ~ +105°、第2関節を-122.5° ~ +122.5°に設定する場合


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >MOTOR ON			' モーターをオンの状態にする
    >POWER LOW			' ローパワーモードにする
    >SPEED 5			' 低速に設定
    >PULSE -436907,0,0,0		' 第1関節の最⼩パルス位置に動作
    >PULSE 5679787,0,0,0		' 第1関節の最⼤パルス位置に動作
    >PULSE 2621440,-2230045,0,0	' 第2関節の最⼩パルス位置に動作
    >PULSE 2621440,2230045,0,0	' 第2関節の最⼤パルス位置に動作
    

Pulse命令 (Go Pulse命令)は、全関節を同時に設定した位置へ動作させます。パルスレンジを変更した関節だけでなく、他の関節の動作も考慮して、動いても安全な場所を設定します。
この例では、第2関節の確認をするときに、第1関節の設定を動作エリアの中心に近い0°の位置 (パルス値“2621440”)にして動作させています。
もし、アームがメカストッパーにぶつかっている場合、またはぶつかってエラーが発生した場合は、支障のない程度にパルスレンジを狭く再設定するか、メカストッパーの位置を広げます。

第1関節メカストッパー


最大動作範囲 (deg.):

取付仕様 アーム⻑ (mm) a b c d e f g h
架台 650, 850, 1000 +152 +107 +60 +15 -15 -60 -107 -152
天井 650 - -
850, 1000 +152 -152
650,850, 1000 - -

最大パルスレンジ (pulse):

取付仕様 アーム⻑ (mm) a b c d e f g h
架台 650,850, 1000 +7048761 +5738041 +4369067 +3058347 +2184534 +873814 -495161 -1805881
天井 650 - -
850, 1000 +7048761 -1805881
650,850, 1000 - -

第2関節メカストッパー

最大動作範囲 (deg.):

アーム⻑ (mm) 取付仕様 環境仕様 Z値範囲 (mm) m n o q
650 架台 S,C,P - +122.5 +152.5 -152.5 -122.5
天井, 壁 S,C,P - +100 +130 -130 -100
850 架台 S - +122.5 +152.5 -152.5 -122.5
C,P Z: 0 ~ –360
Z: –360 ~ –390 +121 +151 -151 -121
天井, 壁 S - +122.5 +152.5 -152.5 -122.5
C,P - +100 +130 -130 -100
1000 架台, 天井, 壁 S,C,P - +122.5 +152.5 -152.5 -122.5

最大パルスレンジ (pulse):

アーム⻑ (mm) 取付仕様 環境仕様 Z値範囲 (mm) m n o q
650 架台 S,C,P - +2230045 +2776178 -2776178 -2230045
天井, 壁 S,C,P - +1820445 +2366578 -2366578 -1820445
850 架台 S - +2230045 +2776178 -2776178 -2230045
C,P Z: 0 ~ –360
Z: –360 ~ –390 +2202738 +2748872 -2748872 -2202738
天井, 壁 S - +2230045 +2776178 -2776178 -2230045
C,P - +1820445 +2366578 -2366578 -1820445
1000 架台, 天井, 壁 S,C,P - +2230045 +2776178 -2776178 -2230045

キーポイント


Z: -360 ~ -390 mmの範囲では、マニピュレーター本体とアームが干渉するため、エリアが制限されます。

第3関節のメカストッパーによる設定

キーポイント


この方法は、標準仕様 (GX10-B/GX10-C***S*)のマニピュレーターにのみ適用できます。
標準仕様(GX20-B/GX20-C***S*),クリーン仕様 (GX10-B/GX10-C/GX20-B/GX20-C***C*), プロテクション仕様 (GX10-B/GX10-C/GX20-B/GX20-C***P*)のマニピュレーターは、第3関節メカストッパーによる動作エリアの設定を変更することができません。

出荷時位置から変更する場合

  1. コントローラーの電源をオンし、モーターをオフ (Motor OFF命令による)の状態にします。

  2. ブレーキ解除スイッチを押しながら、シャフトを押し上げます。
    シャフトを上限まで押し上げると、アーム上カバーが取りはずしにくくなります。押し上げる量は、第3関節メカストッパーの位置を変更できる程度にしてください。

    記号 説明
    a 下限メカストッパー
    b ブレーキ解除スイッチ
    c シャフト

    キーポイント


    ブレーキ解除スイッチを押すと、ハンドなどの自重によりシャフトが下降や回転をすることがあります。シャフトを手で支えながらスイッチを押してください。

  3. コントローラーの電源をオフします。

  4. 下限メカストッパーの止めねじ(2×M4×8、2×M6×6)をゆるめます。
    下限メカストッパーを出荷時位置から変更する際には、M6の止めねじのみを使用します。
    M4の止めねじは、下限メカストッパーから外し、紛失しないでください。出荷時位置に戻す際に再度利用します。

    記号 説明
    a M6×6 止めねじ (くぼみ先)
    b M4×8 止めねじ (平先)

    キーポイント


    第3関節はメカストッパーが上下にありますが、位置変更できるのは上側にある下限メカストッパーだけです。下側にある上限メカストッパーは、第3関節の原点位置を定めていますので、動かさないでください。

  5. シャフトの上端が最⼤ストロークの位置です。制限したいストロークの分だけ下限メカストッパーを下げてください。
    たとえば、“420 mm”ストロークの場合、下限Z座標値は “-420”ですが、これを “-320”にしたいときは、下限メカストッパーを“100 mm”下げます。ノギスなどで距離を測りながら下げてください。

    記号 説明
    a 測定長さ
  6. 下限メカストッパーの止めねじ(2×M6×6)を下図に示す位置(1本は螺旋溝、1本は円筒面)に、しっかり締めます。

    推奨締付トルク:8.0±0.4N⋅m(82±4 kgf⋅cm)

    記号 説明
    a 螺旋溝
    b 円筒面
  7. コントローラーの電源をオンします。

  8. ブレーキ解除スイッチを押しながら第3関節を押し下げ、下端の位置を確認します。メカストッパーを下げすぎると目的位置に届かなくなりますので注意してください。

  9. パルスレンジの下限パルス値を、次の計算式によって計算し、設定します。
    なお、下限Z座標値は負の値 (マイナス)です。計算結果は必ず負の値になります。

    GX10-B/GX10-C**1S (Z:-180 mm):下限パルス=(下限Z座標値)/50×131072×(66/32)
    GX10-B/GX10-C**4S (Z:-420 mm):下限パルス=(下限Z座標値)/50×131072×(66/32)
    例: 180 mmストロークで、メカストッパーを80 mm下げ、下限Z座標値を"-100"に変更する場合
    (-100)/50×131072×(66/32)=-540672


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >JRANGE 3,-540672,0	  '	第3関節のパルスレンジを設定  
    
  10. Pulse命令 (Go Pulse命令)を使って、第3関節を設定したパルスレンジの下限の位置まで低速で動作させます。

    このとき、パルスレンジよりメカストッパー位置が狭いと、第3関節がメカストッパーにぶつかってエラーが発生します。エラーが発生した場合は、支障のない程度にパルスレンジを狭く再設定するか、メカストッパーの位置を広げてやり直します。

    例: 180 mmストロークで、メカストッパーを80 mm下げ、下限Z座標値を“-100”に変更する場合


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >MOTOR ON		'	モーターをオンの状態にする
    >SPEED 5			'	低速に設定
    >PULSE 0,0,- 540672,0	'	第3関節の下限パルス位置に動作
    

    (この例では、第3関節以外のパルス値を“0”にしていますが、第3関節を下げても支障のない位置のパルス値を代入してください。)

出荷時位置に戻す場合

  1. コントローラーの電源をオンし、モーターをオフ (Motor OFF命令による)の状態にします。

  2. ブレーキ解除スイッチを押しながら、シャフトを押し上げます。
    シャフトを上限まで押し上げると、アーム上カバーが取りはずしにくくなります。押し上げる量は、第3関節メカストッパーの位置を変更できる程度にしてください。

    記号 説明
    a 下限メカストッパー
    b ブレーキ解除スイッチ
    c シャフト

    キーポイント


    ブレーキ解除スイッチを押すと、ハンドなどの自重によりシャフトが下降や回転をすることがあります。シャフトを手で支えながらスイッチを押してください。

  3. コントローラーの電源をオフします。

  4. 下限メカストッパーの止めねじ (2×M6×6)をゆるめます。

    記号 説明
    a M6×6 止めねじ
    b
  5. 「出荷時位置から変更する場合」手順4ではずした2×M4×8止めねじを用意します。
    シャフトの溝部と止めねじ(2×M4×8)が下図のような位置になるように調整し、止めねじ(2×M4×8)を挿入します。
    シャフト上端面とメカストッパー上端面が一致するように調整します。止めねじ(2×M4×8)をしっかり締めます。

    推奨締付トルク:2.4±0.1N⋅m(24±1 kgf⋅cm)

    記号 説明
    a シャフト上端面
    b シャフトの溝部
    c 止めねじ
    d メカストッパー上端面
  6. 下限メカストッパーの止めねじ(2×M6×6)を下限メカストッパーの外面より内側に挿入します。

  7. コントローラーの電源をオンします。

  8. ブレーキ解除スイッチを押しながら第3関節を押し下げ、下端の位置を確認します。メカストッパーを下げすぎると目的位置に届かなくなりますので注意してください。

  9. パルスレンジの下限パルス値を、次の計算式によって計算し、設定します。
    なお、下限Z座標値は負の値 (マイナス)です。計算結果は必ず負の値になります。

    GX10-B/GX10-C**1S (Z:-180 mm):下限パルス=(-180)/50×131072×(66/32)=-973210
    GX10-B/GX10-C**4S (Z:-420 mm):下限パルス=(-420)/50×131072×(66/32)=-2270823
    例: 180 mmストロークで、メカストッパーを80 mm下げて変更していたのを、出荷時位置に戻す場合


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >JRANGE 3,-973210,0	  '	第3関節のパルスレンジを設定  
    
  10. Pulse命令 (Go Pulse命令)を使って、第3関節を設定したパルスレンジの下限の位置まで低速で動作させます。
    このとき、パルスレンジよりメカストッパー位置が狭いと、第3関節がメカストッパーにぶつかってエラーが発⽣します。エラーが発⽣した場合は、⽀障のない程度にパルスレンジを狭く再設定するか、メカストッパーの位置を広げてやり直します。

    例: 180 mmストロークで、メカストッパーを80 mm下げて変更していたのを、出荷時位置に戻す場合


    [コマンドウィンドウ]で次の命令を実行します。

    >MOTOR ON             ' モーターをオンの状態にする
    >SPEED 5              ' 低速に設定
    >PULSE 0,0,- 973210,0 '	第3関節の下限パルス位置に動作
    

    (この例では、第3関節以外のパルス値を“0”にしていますが、第3関節を下げても⽀障のない位置のパルス値を代⼊してください。)