WEIGHT設定とINERTIA設定

WEIGHT設定とINERTIA設定は、マニピュレーターの負荷条件の設定です。この設定により、マニピュレーターの動作が最適化されます。

  • WEIGHT設定
    負荷の質量の設定をWEIGHT設定といいます。負荷質量が大きくなるほど全体の速度と加減速が抑えられます。
  • INERTIA設定
    負荷の慣性モーメントと偏心量の設定をINERTIA設定といいます。負荷慣性モーメントが大きくなるほどアーム6の加減速を抑えます。また偏心量が大きくなるほど全体の加減速が抑えられます。

マニピュレーターの持つ性能を十分に発揮させるためには、負荷 (ハンド質量+ワーク質量)、および負荷の慣性モーメントを定格以内にし、アーム6中心から偏心させないでください。しかし、負荷や慣性モーメントが定格を超えたり、偏心がやむをえない場合は、以下の説明にしたがって値を設定してください。

これによりマニピュレーターの動作を最適化し、振動を抑えて作業時間を短縮したり、大きな負荷への対応能力を高めます。また、ハンドとワークの慣性モーメントが大きい場合に発生する持続振動を抑制する効果もあります。

また、"負荷, イナーシャ, 偏心/オフセット測定ユーティリティ"による設定も可能です。

詳細は、以下のマニュアルを参照してください。
"Epson RC+ ユーザーズガイド - 負荷, イナーシャ, 偏心/オフセット測定ユーティリティ"

C4シリーズマニピュレーターの可搬質量は、最大4 (5) kg*です。

下表のとおりモーメント、および慣性モーメントに限界があるため、負荷 (ハンド質量+ワーク質量)がこれらの条件を満たす必要があります。

負荷が質量でなく、力の場合も下表の値を超えないように検討の必要があります。

* 負荷質量が最大可搬質量を超える場合は、以下を参照してください。
"WEIGHT設定 - 負荷質量が最大可搬質量を超える場合の制限事項"

負荷許容量

関節名称 許容モーメント (GD2/4) 許容慣性モーメント
第4関節 4.41 N·m (0.45 kgf·m) 0.15 kg·m2
第5関節* 4.41 N·m (0.45 kgf·m) 0.15 kg·m2
第6関節 2.94 N·m (0.3 kgf·m) 0.1 kg·m2

モーメント
モーメントは、負荷 (ハンド+ワーク)に働く重力を支えるために必要な関節にかかるトルクの大きさを表します。負荷の質量や偏心量が大きいほどモーメントは大きくなり、関節への負荷が増えるため、許容量を守ってください。

保持トルクの最大値 T は、以下の計算式によって求めます。

T = m (kg) × L (m) × g (m/s2)

  • m: 負荷質量 (kg)
  • L: 負荷偏心量 (m)
  • g: 重力加速度 (m/s2)

下図は、負荷 (ハンド+ワーク)の体積が小さい場合の負荷重心位置分布を示しています。下図を参考に、負荷の重心位置が許容値以内になるようにハンドの設計をしてください。

記号 説明
a アーム* 回転中心からの距離[mm]
b アーム* 回転中心からの負荷中心位置[mm]

最大負荷偏心量 (関節回転中心から負荷の限界重心位置までの距離)

WEIGHT 1 kg WEIGHT 2 kg WEIGHT 3 kg WEIGHT 4 kg
第4 200 mm 200 mm 150 mm 112 mm
第5 200 mm 200 mm 150 mm 112 mm
第6 200 mm 150 mm 100 mm 75 mm

(最大負荷偏心量は200 mm以下に制限されます。)

負荷許容量から負荷の限界重心位置を計算する場合、アーム6のフランジ面からではなく、アーム5回転中心からの距離が算出されます。フランジ面から負荷重心までの距離を算出する場合は、アーム5回転中心からフランジ面までの距離 (= 65 mm)を差し引いてください。

例: アーム6回転中心の直線上 (B = 0)の位置に 2.5 (kg)の負荷をかけたときのアーム5限界取付寸法 (A)

許容モーメント制限による重心位置: 4.41 N·m/(2.5 kg × 9.8 m/s2) = 0.18 m = 180 mm

許容モーメントに制限されるため、負荷限界重心位置はアーム5回転中心から180 mmとなる。

フランジ面からの負荷限界重心位置までの距離 A = 180 mm - 65 mm = 115 mm

負荷限界取付寸法

[単位: mm]

記号 説明
a 負荷重心位置
b アーム6回転中心
c フランジ面
d アーム5回転中心