重力補償
概要
重力補償とは、力覚センサーが受ける重力の影響を軽減する機能です。
力覚センサーは、リセットした瞬間の力の状態を“0”として、そこからの差分を計測します。そのため、ロボットがある姿勢のとき、力覚センサーをリセットしてからロボットを別の姿勢に変化させた場合、重力の影響を受けたハンド、およびワークの重さも力として計測します。これにより、力制御機能が影響を受け目的の作業ができないことがあります。重力補償では、計測した力から重力影響を軽減することで、目的の作業中に、外部物体から受ける力のみを取り出します。
重力補償を使用しても、力覚センサーは重力の影響を受けます。そのため、表示される値が力覚センサーの定格内であっても、計測した値が定格を超えている場合は、5548エラーが発生します。
注意
マスプロパティーと重力方向の設定や、使用するマスプロパティー番号が、正しくない状態で力制御機能を実行すると、力制御機能が意図しない動作を行うことがあります。十分に注意して設定し、動作確認を行ってから力制御機能を実行してください。
マスプロパティー
マスプロパティーオブジェクトは、重力補償のための質量特性をあつかうオブジェクトです。
マスプロパティーオブジェクトは、力覚センサーよりも先端に取りつけられている全ての物体(ハンド, ワークなど)の重さ(Massプロパティー)と、重心(GravityCenterプロパティー)を持ったオブジェクトです。重さは、ハンドやワークなど全ての重さを合わせた値を設定し、重心は、ツール0座標系における重心位置を設定します。
マスプロパティーオブジェクトは、ロボットごとに同時に15個の値が保存できます。ロボットマネージャーの[Mass設定]パネル、またはMPSetステートメントで設定できます。
[Mass設定]パネルでは、直接重さと重心位置の設定ができます。また、6軸型ロボットはマスプロパティーウィザードによって自動的に同定できます。
詳細は、次の項を参照してください。
ソフトウェア編 [ロボットマネージャー] (ツールメニュー)
- [ツール]-[ロボットマネージャー]-[Mass設定]パネル
MPSetステートメントでは、各プロパティーに対して直接値が設定できます。
詳細は、次のマニュアルを参照してください。
"Epson RC+ 8.0 オプション Force Guide 8.0 SPEL+ランゲージリファレンス"
重力方向
重力方向は、重力補償のために必要なロボットに対する重力の方向です。
重力方向は、各ロボットのベース座標系における重力方向のベクトルで指定します。ロボット座標系は、鉛直上方向を “+Z”、ロボット正面を “+Y”方向とした座標系で、デフォルトでは、ベース座標系もロボット座標系と一致します。重力は鉛直下方向にかかるため、重力方向は、(0, 0, -1)のベクトルとなります。これは、ロボットが架台取付でも、天井取付でも共通です。ただし、Baseステートメントを使い、ベース座標系を変更している場合や、ロボットが物理的に傾いた状態で設置されている場合は、ベース座標系における重力方向のベクトルを求め、設定する必要があります。
重力方向は、各ロボットに対して1つの値を設定します。ロボットマネージャーの[Mass設定]パネル、またはF_GravityDirectionステートメントで設定できます。
[Mass設定]パネルでは、重力方向を値で設定できます。また、6軸型ロボットは、マスプロパティーウィザードによって自動的に同定できます。
詳細は、次の項を参照してください。
ソフトウェア編 [ロボットマネージャー] (ツールメニュー)
- [ツール]-[ロボットマネージャー]-[Mass設定]パネル
F_GravityDirectionステートメントでは、重力方向を値で設定できます。
詳細は、次のマニュアルを参照してください。
"Epson RC+ 8.0 オプション Force Guide 8.0 SPEL+ランゲージリファレンス"
重力補償の実行
ロボットと対応づけられた力覚センサーは、重力補償が常時実行されます。ロボットと対応づけられていない力覚センサーは、重力補償が行えません。また、保存されたマスプロパティーオブジェクトから使用するオブジェクトを選択することで、任意のタイミングで作業状態に応じたパラメーターに変更できます。オブジェクト選択は、MPステートメントで行います。MPステートメントの実行後は、フォースセンサーオブジェクトのResetプロパティーで力覚センサーのリセットを行ってください。
例: マスプロパティーの1番を用いて重力補償を行う場合
MP 1
MPステートメントの詳細は、次のマニュアルを参照してください。
"Epson RC+ 8.0 オプション Force Guide 8.0 SPEL+ランゲージリファレンス"
ワークにも重さがあるため、ワークを把持した状態と、ワークを放出した状態で、それぞれ力制御する場合は、それぞれの状態についてマスプロパティーを設定し、切り替えながら力制御を実行してください。
0番(MP0)、または重さが“0”であるマスプロパティーオブジェクトを選択することで、重力補償の機能を停止できます。姿勢変化が小さい作業など、重力補償を必要としない場合は、“MP0”を選択して重力補償を停止してください。停止後に“MP0”以外のマスプロパティーオブジェクトを指定すると、重力補償を再開できます。
選択されたマスプロパティー番号、および設定したマスプロパティーは、変更されるまでロボットコントローラーの電源をオフした後も保持されます。ロボットコントローラーの電源をオンしたとき、重力補償も自動的に開始されます。