Weight設定とInertia設定

マニピュレーターの持つ性能を十分に発揮させるためには、負荷 (ハンド質量+ワーク質量)、および負荷の慣性モーメントを定格以内にし、第4関節中心から偏心させないでください。しかし、負荷や慣性モーメントが定格を超える場合や、偏心がやむをえない場合は、「Weight設定」と「Inertia設定」の説明にしたがってパラメーターを設定してください。
これにより、マニピュレーターのPTP動作を最適化し、振動を抑えて作業時間を短縮することができます。また、ハンドとワークの慣性モーメントが大きい場合に発生する持続振動を抑制する効果もあります。
また、“負荷, イナーシャ, 偏心/オフセット測定ユーティリティ”による設定も可能です。
詳細は、以下のマニュアルに記載しています。
"Epson RC+ ユーザーズガイド - 負荷, イナーシャ, 偏心/オフセット測定ユーティリティ"

Weight設定

注意


  • ハンド+ワークの質量は、必ずRS4-C351*: 4 kg, RS6-C552*: 6 kg以下にしてください。RS4-C351*: 4 kg, RS6-C552*: 6 kgを超える負荷に対応するように設計されていません。また、必ず負荷に応じた値を設定してください。ハンド質量パラメーターに実際の質量より小さな値を設定すると、エラーの発生や衝撃の原因となり、十分な機能が発揮できないばかりか、各機構部品の寿命を短くする可能性があります。

RSシリーズの許容する負荷 (ハンド質量+ワーク質量)は、定格が1 kg、最大でRS3-351*: 3 kg, RS4-551*: 4 kgです。負荷質量に応じて、Weight命令のハンド質量パラメーターの設定変更を行います。設定変更を行うと、「ハンド質量」に応じた、マニピュレーターのPTP動作時最大の速度と加減速度が自動的に補正されます。

シャフトに取りつけた負荷の質量

シャフトに取りつけた負荷 (ハンド+ワーク)の質量は、Weight命令の「ハンド質量」パラメーターで設定します。


[ツール] - [ロボットマネージャー] - [ハンド質量設定]パネル - [負荷]テキストボックスで設定します。([コマンドウィンドウ]で、Weight命令による設定も可能です。)

アームに取りつけた負荷の質量

カメラやエアバルブなどをアームに取りつける場合は、その質量をシャフトの等価質量に換算し、シャフトに取りつけた負荷の質量に加算して「ハンド質量」パラメーターを設定します。

等価質量の計算式
WM=M×(LM+L1)2/(L1+L2)2
WM: 等価質量
M: アームに取りつけた負荷の質量
L1: アーム1長さ
L2: アーム2長さ
LM: 第2関節回転中心からアームに取りつけた負荷の重⼼までの距離

例:
負荷質量W = 1 kgをつけたRS3のアーム2先端 (第2関節回転中心から250 mmとする)に、0.5 kgのカメラをつけた場合の「ハンド質量」パラメーターを算出します。
W=1.0
M=0.5
L1=175
L2=175
LM=250
WM=0.5×(250+175)2/(175+175)2=0.74 (小数点以下二桁まで切り上げ)
W+WM=1+0.74=1.74
[ハンド質量]パラメーターに“1.74”を設定します。

記号 説明
a カメラ全体の質量 M=0.5 kg
b シャフト
c 第2関節
d 第1関節

Weight設定時の速度の自動補正


グラフ上のパーセンテージは、定格設定時の速度を100%とした場合の比です。

定格
RS4-C:1kg
RS6-C:2kg

Weight設定時の加減速度の自動補正


グラフ上のパーセンテージは、定格設定時の速度を100%とした場合の比です。

定格
RS4-C:1kg
RS6-C:2kg

Inertia設定

慣性モーメント (イナーシャ)とInertia設定

慣性モーメントとは、物体の回りにくさを表す量で、慣性モーメント, イナーシャ, GD2などの値で表されます。シャフトにハンドなどを取りつけて動作させる場合は、負荷の慣性モーメントを考慮しなければなりません。

注意


  • 負荷 (ハンド+ワーク)の慣性モーメントは、必ず0.05 kg·m2以下にしてください。 RS4-Cは0.05 kg·m2、RS6-Cは0.12 kg·m2を超える慣性モーメントに対応するように設計されていません。また、必ず慣性モーメントに応じた値を設定してください。慣性モーメント (イナーシャ)パラメーターに実際の慣性モーメントより小さな値を設定すると、エラーの発生や衝撃の原因となり、十分な機能が発揮できないばかりか、各機構部品の寿命を短くする可能性があります。

RSシリーズの許容する負荷の慣性モーメントは、 RS4-Cは定格0.005 kg·m2、最大0.05 kg·m2、RS6-Cは定格0.01 kg·m2、最大0.12 kg·m2です。負荷の慣性モーメントに応じて、Inertia命令の負荷の慣性モーメント(イナーシャ)パラメーターの設定変更を行います。設定変更を行うと、第4関節のPTP動作時最大の加減速度が「慣性モーメント」に応じて自動的に補正されます。

シャフトに取りつけた負荷の慣性モーメント

シャフトに取りつけた負荷 (ハンド+ワーク)の慣性モーメントは、Inertia命令の「慣性モーメント (イナーシャ)」パラメーターで設定します。


[ツール] - [ロボットマネージャー] - [ハンド偏心設定]パネル - [慣性モーメント]で設定します。([コマンドウィンドウ]で、Inertia命令による設定も可能です。)

Inertia (慣性モーメント)設定時の第4関節加減速度の自動補正


グラフ上のパーセンテージは、定格設定時の速度を100%とした場合の比です。

定格
RS4-C:0.005kg⋅㎡ 
RS6-C:0.01kg⋅㎡

偏心量とInertia設定

注意


  • 負荷 (ハンド+ワーク)の偏心量は必ず100 mm以下にしてください。
    RSシリーズは、100 mmを超える偏心量に対応するように設計されていません。また、必ず偏心量に応じた値を設定してください。偏心量パラメーターに実際の偏心量より小さな値を設定すると、エラーの発生や衝撃の原因となり、十分な機能が発揮できないばかりか、各機構部品の寿命を短くする可能性があります。

RSシリーズの許容する負荷の偏心量は、定格0 mm、最大100 mmです。負荷の偏心量に応じて、Inertia命令の偏心量パラメーターの設定変更を行います。設定変更を行うと、「偏心量」に応じたマニピュレーターのPTP動作時最大の加減速度が自動的に補正されます。

偏心量

記号 説明
a 回転軸
b 負荷重心位置
c 偏心量 (100 mm以下)

シャフトに取りつけた負荷の偏心量

シャフトに取りつけた負荷 (ハンド+ワーク)の偏心量は、Inertia命令の「偏心量」パラメーターで設定します。


[ツール] - [ロボットマネージャー] - [ハンド偏心設定]パネル - [偏心量]で設定します。 ([コマンドウィンドウ]で、Inertia命令による設定も可能です。)

Inertia(偏心量)設定時の加減速度の自動補正


グラフ上のパーセンテージは、定格設定時の速度を100%とした場合の比です。

定格
RS4-C:1kg
RS6-C:2kg

慣性モーメントの計算方法

負荷 (ワークを持ったハンド)の慣性モーメントの計算例を示します。

負荷全体の慣性モーメントは、個々の部分[A] ~ [C]の合計で求められます。

記号 説明
A ハンド
B ワーク
C ワーク
a 回転軸
b シャフト

[A] [B] [C]の各慣性モーメントの計算方法は次のとおりです。これらの基本的な形状の慣性モーメントを参考に、負荷全体の慣性モーメントを求めてください。

(a) 直方体の慣性モーメント

記号 説明
a 回転軸
b 直方体の重心

(b) 円柱の慣性モーメント

記号 説明
a 円柱の重心
b 回転軸

(c) 球の慣性モーメント

記号 説明
a 回転軸
b 球の重心