フォースガイダンス機能
フォースガイダンス機能の概要
フォースガイダンス機能は、SPEL+言語によるプログラミングを用いずに、力制御機能やフォーストリガー機能、フォースモニター機能を用いた作業を作成する機能です。
フォースガイダンス機能では、フォースガイドシーケンスとフォースガイドオブジェクトによって作業を作成します。
フォースガイドシーケンス
特定の作業またはその一部を実行するために必要なフォースガイドオブジェクトを特定の順番で並べたコンテナのようなものと考えることができます。フォースガイドオブジェクト
力制御機能を含む特定の動作や、条件分岐など、ある特定の処理と考えることができます。
フォースガイダンス機能では、フォースガイドシーケンスというコンテナに、フォースガイドオブジェクトという処理を並べるようにして、特定の作業を作成します。フォースガイドシーケンスと、フォースガイドオブジェクトには、ユーザーが任意の動作や作業を行うための汎用的なもの (汎用フォースガイドシーケンス, 汎用フォースガイドオブジェクト)と、特定の作業を実現するための専用的なもの (専用フォースガイドシーケンス, 専用フォースガイドオブジェクト)があります。
また、フォースガイドシーケンスとフォースガイドオブジェクトは、プロパティーとリザルトを備えています。
- プロパティー
フォースガイドシーケンスやフォースガイドオブジェクトの処理を決定する設定値です。プロパティーの設定によって、同じフォースガイドオブジェクトでも、異なる動きを実現できます。 - リザルト
フォースガイドシーケンスやフォースガイドオブジェクトを実行した結果を表す値です。
フォースガイドシーケンス
フォースガイドシーケンスとは、特定の作業またはその一部を実行するために必要なフォースガイドオブジェクトを、特定の順番で並べたコンテナのようなものと考えることができます。
フォースガイドシーケンスには、汎用フォースガイドシーケンスと、専用フォースガイドシーケンスがあります。
汎用フォースガイドシーケンス:
任意の汎用フォースガイドオブジェクトを追加して作成するフォースガイドシーケンスです。
フォースガイドオブジェクトをユーザーが選んで並べることで、特定の作業を実現することができます。そのため、汎用フォースガイドシーケンス単体では動作できません。専用フォースガイドシーケンス:
特定の作業専用のフォースガイドシーケンスです。
ユーザーが行いたい作業を選び、シーケンスウィザードで設定を行うことで、フォースガイドオブジェクトが自動で配置されます。
また、専用フォースガイドシーケンスには、汎用フォースガイドオブジェクトを追加することもできます。
下表は専用シーケンスの一覧です。
説明 | |
---|---|
貼付け | 把持しているワークの面と、対象物の面を合わせながら指定方向に押しつけます。 |
ネジ締め | 電動ドライバーによってネジ締めをします。ネジ締めをした後に、ネジを一度緩めて再度締め直すネジ締め直しを行うこともできます。 |
高さ検査 | ロボットを指定方向に移動させ、接触した位置で停止させて、対象物の高さを測定して検査します。 |
挿入 | ワークを挿入します。コネクターなどを挿入した後に、挿入方向と逆方向に力をかけて、挿入したワークが抜けないことを判断することもできます。 |
フォースガイダンス機能では、フォースガイドシーケンスを指定して、SPEL+言語やGUIから実行することができます。
フォースガイドシーケンスの備えているプロパティーは、そのフォースガイドシーケンス全体に影響を与えるものや、フォースガイドシーケンスを実行するときに行う処理の設定などです。
またフォースガイドシーケンスの備えるリザルトは、そのフォースガイドシーケンスとしての結果を示します。
フォースガイドオブジェクト
フォースガイドオブジェクトとは、力制御機能を含む特定の動作や、条件分岐など、ある特定の処理と考えることができます。
フォースガイダンス機能では、フォースガイドオブジェクト単体で実行することはできません。必ずフォースガイドシーケンスとして実行されます。
フォースガイドオブジェクトが備えるプロパティーは、基本的にそのフォースガイドオブジェクトに対して影響を与えます。ただし、1つ前のオブジェクトの設定によって、次のフォースガイドオブジェクトのプロパティー設定が制限されることがあります。例えば、2つのフォースガイドオブジェクトの力制御機能をつなげる場合、2つ目のフォースガイドオブジェクトのプロパティー設定が制限されることがあります。
またフォースガイドオブジェクトの備えるリザルトは、そのフォースガイドオブジェクトの結果を示します。
フォースガイダンス機能では、以下の10個の汎用フォースガイドオブジェクトと、専用フォースガイドシーケンスに、自動的に配置される6個の専用フォースガイドオブジェクトを組み合わせてフォースガイドシーケンスを作成することができます。
汎用フォースガイドオブジェクト
接触オブジェクト
接触オブジェクトは、ワークなどの物体に接触するまで指定方向に移動させ、接触したとき停止するようにロボットを動作させるフォースガイドオブジェクトです。
他のフォースガイドオブジェクトを開始する位置や把持位置の位置決めに使用します。ワーク寸法や、ワークの把持位置などに誤差がある場合でも、接触位置を検出できるため、次の動作やフォースガイドオブジェクトを安定して実行できます。脱力オブジェクト
脱力オブジェクトは、指定方向の力が“0”になるような位置にロボットを移動させるフォースガイドオブジェクトです。
押付けオブジェクトなどによる押付け後の安全な押付け状態の解除や、組み立て中に加わった不要な力の除去などに使用します。またハンド動作と組み合わせることで倣い把持を行うことができます。ワーク寸法やワーク位置などに誤差がある場合でも、ワークに不要な力をかけずに安定して把持することができます。倣い移動オブジェクト
倣い移動オブジェクトは、指定方向の力が“0”になるように倣いながら指定された軌道でロボットを移動させるフォースガイドオブジェクトです。
扉の開閉など操作対象によって固定される軌道の移動などに使用します。位置制御の場合、軌道がずれると操作対象に不要な力が加わり破壊する恐れがありますが、倣い移動オブジェクトは、加わる力が“0”になるように制御します。そのため、精密な軌道の教示をしなくても、操作対象を破壊せずに移動することができます。面合わせオブジェクト
面合わせオブジェクトは、ロボットが把持しているワークなどの面と、作業台や作業台に置かれたワークなどの面が平行になるように、指定方向に押付けながら回転方向のトルクが“0”になるような位置にロボットを移動させるフォースガイドオブジェクトです。
組み立て中の位置決めや、ワークの安定した配置などに使用します。ワーク寸法やワークの把持位置などの誤差がある場合でも、安定した接触状態を実現できます。押付け探りオブジェクト
押付け探りオブジェクトは、ロボットの把持しているワークなどを、作業台や作業台に置かれたワークなどに押付けながら、指定された軌道を移動して、穴や凸形状の位置で停止するようにロボットを動作させるフォースガイドオブジェクトです。
嵌合穴の検出や、組み立て中の位置決めなどに使用します。ワーク寸法やワークの把持位置などに誤差がある場合でも安定して穴位置や凸形状位置を検出することができます。押付け探りオブジェクトは、下記オブジェクトの後に用いることを推奨します。 接触オブジェクト 面合わせオブジェクト 押付けオブジェクト接触探りオブジェクト
接触探りオブジェクトは、ワークなどの物体に接触するまで指定方向に移動させ、指定距離移動した位置を穴位置として検出し、指定距離移動せずに物体に接触したとき開始位置へ戻り位置を変えて再度接触動作することを繰り返すようにロボットを動作させるフォースガイドオブジェクトです。
リード部品やコネクターなど、“PressProbe”による穴検出が困難なワークでの、穴位置検出などに使用します。ワーク寸法やワークの把持位置などに誤差がある場合でも、安定して穴位置を検出することができます。押付けオブジェクト
押付けオブジェクトは、指定方向に指定の力で押付けるようにロボットを動作させるフォースガイドオブジェクトです。
また、同時に別の指定方向を、脱力オブジェクトのように倣わせることもできます。接触していない状態で、押付けオブジェクトを実行した場合、指定の力になる方向にロボットは移動します。押付けや組み立てでの押し込みなどに使用します。ワーク寸法やワークの把持位置に誤差がある場合でも、安定して一定の力を保つことができます。押付け移動オブジェクト
押付け移動オブジェクトは、指定方向に指定の力で押付けながら指定された軌道でロボットを移動させるフォースガイドオブジェクトです。
また、同時に別の指定方向を、倣い移動オブジェクトのように倣わせることもできます。接触していない状態で押付け移動オブジェクトを実行した場合、指定された軌道に加えて、指定の力になる方向にもロボットは移動します。嵌合や組み立てでの押し込み、ねじ締め、研磨などに使用します。ワーク寸法やワークの把持位置などに誤差がある場合でも、安定して力を一定に保ちながら、移動することができます。条件分岐オブジェクト
条件分岐オブジェクトは、1つのフォースガイドシーケンスの中で、指定したフォースガイドオブジェクトの成否に基づいて、実行するフォースガイドオブジェトを変更するためのフォースガイドオブジェクトです。
嵌合での押付け探りオブジェクトの実行要否判定などに使用します。実際の動作の進行状況に基づいて、必要なフォースガイドオブジェクトのみを実行することができます。SPEL関数オブジェクト
SPEL関数オブジェクトは、SPEL+言語のファンクションを指定して、それを実行するフォースガイドオブジェクトです。
I/Oの操作など、フォース機能以外の機能をフォースガイドシーケンスの中で実行したい場合に使用します。上級者向けのオブジェクトです。
専用フォースガイドオブジェクト
貼付けオブジェクト:
貼付けオブジェクトは、把持しているワークの面と、対象物の面を合わせながら指定方向に押付けるフォースガイドオブジェクトです。
押付けながら面合わせを行うかどうかを選択できます。面合わせを有効にすることで、ワーク寸法やワークの把持位置などの誤差がある場合でも、安定して貼付けを行うことができます。貼付けの成否判定は、設定した力と位置の完了条件から行います。このオブジェクトは、貼付けシーケンスを作成することで、自動で配置されます。ネジ締めオブジェクト:
ネジ締めオブジェクトは、I/O操作可能な電動ドライバーでネジ締めを行うフォースガイドオブジェクトです。
ネジ締め中は、ドライバーの回転軸とネジ締め方向に対して垂直方向の力が “0”になるように倣いながらネジを締める方向に押しつけます。ネジ締めの成否判定は、ドライバーのネジ締め完了信号と、設定した位置の完了条件から行います。このオブジェクトは、ネジ締めシーケンスを作成することで、自動で配置されます。ネジ締め直しオブジェクト:
ネジ締め直しオブジェクトは、電動ドライバーで締められたネジを1度ゆるめて、再度締め直すフォースガイドオブジェクトです。
このオブジェクトは、ネジ締めオブジェクトでネジ位置がネジ締め成功判定位置に達する前に、ドライバーのネジ締め完了信号を受けたときに実行されます。そのため、ネジ締め途中で噛んでしまい、正しくネジが締められなかった場合に対処することができます。ネジ締め直しの成否判定は、設定した位置の完了条件から行います。このオブジェクトは、ネジ締めシーケンスのネジ締め直し動作を有効にすることで、自動で配置されます。高さ検査オブジェクト:
高さ検査オブジェクトは、ロボットを指定方向に移動させて接触した位置で停止させ、対象物の高さを測定して検査するフォースガイドオブジェクトです。
配材されたワークの寸法や、組立作業後のワークの寸法の高さを測定することで、組立作業が正しく行われたかを確かめることができます。高さ検査の成否判定は、設定した位置の成功条件から行います。このオブジェクトは、高さ検査シーケンスを作成することで、自動で配置されます。挿入オブジェクト:
挿入オブジェクトは、公差のラフなワークを挿入するフォースガイドオブジェクトです。
挿入中は、挿入方向に対して垂直な力が “0”になるように倣いながら押し付けます。また、回転方向の力を倣わせるかどうかを選択できます。挿入の成否判定は、設定した力と位置の完了条件から行います。このオブジェクトは、挿入シーケンスを作成することで、自動で配置されます。引張り試験オブジェクト:
引張り試験オブジェクトは、コネクターなどを挿入した後に、挿入方向と逆方向に力をかけて、挿入したワークが抜けないことを判断するフォースガイドオブジェクトです。
このオブジェクトは、挿入オブジェクトで挿入の成功条件を達成した場合に実行されます。引張り試験の成否判定は、設定した力と位置の完了条件から行います。このオブジェクトは、挿入シーケンスの引張り試験を有効にすることで、自動で配置されます。