はじめに
Part Feedingについて
Epson RC+ 8.0 オプションPart Feeding(以下、Part Feedingオプション)では、パーツをフィーダーによって分離し、ロボットがフィーダーからパーツをピックアップするシステムを簡単に開発することができます。
背景
製品の短寿命化、多品種化の流れ、JIT (少ロット, 短納期)への対応など、ものづくりの生産形態は多様化しています。その一方で、継続的な賃金上昇、製造現場からの人離れ、労働者の高齢化など、人に頼る物づくりは難しくなってきています。また、多様化に対応できる柔軟性 (フレキシビリティ)をどう実現するかが課題となっています。
自動化ラインを構成する要素の1つとして、部品供給に焦点をあててみましょう。部品供給能力以上に生産量を上げられないように、部品供給は生産設備の重要な要素です。部品供給の方式としては、比較的安価で豊富な選択肢がある振動型のボウルフィーダーが主流です。しかし、ボウルを供給部品に応じて作りこむ必要があり、さらに、部品ごとにボールを手作業で交換し、専門の技術者が調整を行う必要があります。高度なエンジニアリング能力や経験が必要で、多品種化や短納期対応が難しいといった課題があります。
ボウルフィーダーの欠点を解決する装置として、近年、“インテリジェントパーツフィーダー”(以下、フィーダー)が登場しました。この装置は、フィーダーの設定を変更することで、さまざまな供給部品への対応が簡単にできます。このフィーダーと、パーツを認識する画像処理や、認識された部品をハンドリングするロボットを組み合わせた製品も登場しています。
このような製品は、フィーダーの個別動作をロボットシステムから行えるだけのもので、フィーダーの調整, 操作, 画像処理, ロボットでの部品のハンドリングは、お客様が設計する必要があります。部品供給を総合的に検討し設計するには、時間と経験が必要です。例えば、部品投入数やロボットが部品をピックする位置で、サイクルタイムは大きく変化します。設計を適切に行わないと、たとえ高性能, 高機能のフィーダーであっても、その機能や(性能が十分に発揮できず、サイクルタイムを向上させることはできません。フィーダーを誰でもすぐに使えるようにすることは、従来の製品では不可能でした。
Part Feedingオプションを導入するメリット
Part Feedingオプションを導入すると、以下のメリットがあります。
フィーダー, ビジョン, ロボットの完全な統合
部品供給に必要な要素がワンパッケージで提供されます。フィーダー, ロボット, ビジョンが完全に統合されています。これらを個別に準備し評価する場合に比べ、導入時の手間が省けます。装置開発, 立ち上げ工数の削減
フィーダー, ビジョンの動作は自動的に行われます。お客様がプログラミングする必要は、ありません。ロボット動作は、お客様に記述して頂きますが、テンプレートコードに書き込むだけです。フィーダーやビジョンとロボット動作の同期制御は、自動的に行われます。最小限のプログラミングで装置開発を行えます。お客様が今お使いの環境に統合することも簡単に行えます。フィーダー, ロボット, ビジョンの設定は、GUIで簡単に行えます。ダウンタイム, ランニングコストの削減
Part Feedingオプションで、多様な部品に対応することができます。部品切り替えのたびに設備を変更する必要がなくなり、生産時のダウンタイムを短くすることができます。また、設備を新規に製作する必要がなく、長期的なランニングコストを抑えることができます。
Part Feedingオプションの機能
以下の代表的な機能により、簡単にフィーダーの機能や性能を十分に引き出すことができます。また、効率の良い部品供給システムを実現することができます。
- フィーダーとの通信I/F
フィーダーの設定や制御を行うための通信プログラムは、本システムに組み込まれています。お客様が通信のためにプログラミングを行う必要はありません。 - フィーダーの自動調整機能
パーツによって、フィーダーのパラメーター(振幅, 振動時間など)を自動調整する機能が組み込まれています。お客様は簡単な手順にしたがって操作するだけで、フィーダーに関する知識がなくても簡単に調整作業を行うことができます。 - フィーダーの制御アルゴリズム
フィーダーを制御するアルゴリズムが組み込まれています。このアルゴリズムは、ロボットがパーツをピックするのにかかる時間がなるべく短くなるように考慮されています。お客様が特に意識しなくても効率のよい動作を実現できます。 - ロボット, フィーダーの稼働状況を把握するサイクルタイムログ出力機能
ロボット, フィーダー, ビジョンの動作時間をファイルに出力する機能が組み込まれています。パラメーターの設定を変更してログを取得し分析することで、より効率の良い動作を行うことができます。この機能を使用するには、Epson RC+ 8.0がインストールされたPCがコントローラーに接続されている必要があります。 - マルチフィーダー動作
最大4台までのフィーダーを1つのコントローラーに接続し、制御することができます。T/VTシリーズは、最大2台まで制御することができます。複数のフィーダー動作を連携させたい場合に、1つのコントローラーで制御ができるため、プログラムが簡単になります。 - マルチパーツ動作
最大4種類までのパーツを、同時に1つのフィーダーに入れて処理することができます。フィーダーの設置台数を減らすことができるので、低コスト化や、省スペース化を実現できます。マルチパーツ動作では、ロボットは1フィーダーあたり2台まで使用可能です。 - パージ動作
フィーダー上のパーツを排出する動作が組み込まれています。品種切り替えでフィーダー上のパーツを自動排出したい場合や、不良パーツおよび過剰に投入されたパーツの排出に利用することができます。IF-80では、パージ動作のためのプラットフォームおよび、排出したパーツを貯留する容器があります。
前提となるEpson RC+ 8.0 の基本的知識
Part Feedingオプションは、Epson RC+ 8.0環境をコアとしたオプションです。
Part Feedingオプションをご利用いただくためには、Epson RC+ 8.0の開発環境、エプソンのロボット、Epson RC+ 8.0オプションVision Guide 8.0についての知識が必要です。本マニュアルの内容は、次の事項について知識がある方を対象として説明しています。
- Epson RC+ 8.0プロジェクト管理の概念と使用方法
- Epson RC+ 8.0で、SPEL+プログラムを作成し編集する方法
- Runウィンドウから、SPEL+プログラムを実行する方法
- SPEL+の基本的な言語構造や機能, 使用方法
- Vision Guide 8.0の機能, 使用方法
関連マニュアル
Part Feeding オプションを使用するときは、以下のマニュアルを参照してください。
- "Epson RC+ 8.0 オプション Part Feeding 8.0 IF-***編"
***: フィーダー機種名(IF-80、またはIF-240、またはIF-380/530)
各フィーダーの使用方法についての説明が記載されています。 - "Epson RC+ 8.0 オプション Part Feeding 8.0 Hopper編"
ホッパーの使用方法についての説明が記載されています。 - "Epson RC+ 8.0 ユーザーズガイド"
エプソンロボットコントロールシステムの使用方法についての説明が記載されています。 - "SPEL+ ランゲージリファレンス"
SPEL+言語の命令について記載されています。 - 各ロボットマニュアル
ロボットに関する様々な説明が記載されています。
本文中の記号について
本文中では、いくつかのマークを用いて重要な事項を記載しています。それぞれのマークには、次のような意味があります。
警告
この表示を無視して誤った取り扱いをすると、人が死亡、または重傷を負う可能性が想定される内容を示しています。
警告
この表示を無視して誤った取り扱いをすると、人が感電により、負傷する可能性が想定される内容を示しています。
注意
この表示を無視して誤った取り扱いをすると、人が傷害を負う可能性が想定される内容および物的損害のみの発生が想定される内容を示しています。
キーポイント
ロボットシステムを取り扱う上で、必ず守っていただきたいこと、知っておいていただきたいことを記載しています。
ヒント
簡単な操作方法や、操作のヒントを記載しています。